位牌の選び方 【更新日】
お位牌は連名で「ご夫婦のお位牌」としても問題はありません
極楽浄土へ旅立った方のご供養は、お位牌を通じて行われます。
ご僧侶に魂入れしてしていただきたお位牌は、故人の魂の依代(よりしろ)となり残された家族との接点の役割を果たします。
このため、お位牌は故人お1人に対して1本(1柱)のお位牌をお作りするのが基本です。
ですが、お仏壇の内部に祀れるお位牌の本数にも限りがありますので、多くなりすぎた場合には回出位牌(くりだしいはい)や過去帳などにまとめることがあります。
ご夫婦の場合に限っては、位牌を連名でつくる「夫婦位牌(めおといはい)」という大きめのお位牌にまとめる場合があります。
この記事では、位牌を夫婦の連名で作る場合に気をつける点や必要な供養の手順などを解説いたします。




目次
お位牌を連名にする理由は「物理的スペースの問題」や「夫婦の仲の良さ」
基本的には、お位牌は1人に1本が原則です。
中には夫婦は位牌を1つの夫婦位牌にするものと思っていらっしゃる方もいますが、それは正しくありません。
どちらかといえば、位牌を連名で1つの夫婦位牌にする方の割合の方が少なく、1人に1本のお位牌をご用意するというのが主流です。
それでも夫婦位牌を作るのはいくつか理由があります。
![モダン位牌 [美影] ワイン](https://cdn.shopserve.jp/memoriarubutsudan.com/cdnassets/images/service/column/bnr_kaiyu_i002.png)



仏壇が狭くなってきた
複数の位牌を1つにまとめることが出来る「回出位牌」にする程の位牌の本数ではなく、お仏壇を大きなサイズの仏壇に買い替えるという程の大掛かりなことはしたくない場合。
夫婦がとても仲睦まじかった
伴侶の生前からの願いや遺言により、残された伴侶が後から文字入れを出来るようにスペースを開けた巾広位牌を作られる場合や、ご両親が亡くなった後に子供達により遺言などによる指示で作られる場合。
お位牌をつくるタイミングで夫婦の位牌に見た目の差がある
先立たれた伴侶のお位牌が経年により古さを帯びてきた場合に、夫婦間のお位牌の見た目に差が無いように子供達により作られる場合。
この様に、ご自身の希望により作られる場合と、伴侶や子孫達によって作られる場合があります。
お位牌を連名にする「夫婦位牌」を作る手順には供養が含まれます
お位牌を連名で作る場合には新たに巾広位牌(はばひろいはい)か少し大きめの4寸以上のお位牌を使います。
ご夫婦が同時に亡くなられる事は稀でしょうから、連名でのお位牌を作る際は既にあるお位牌の「魂抜き」の供養から行います。




菩提寺に相談する
地域やお寺様によっては「夫婦位牌」自体を良しとしない場合もありますので、事前に菩提寺へご確認ください。
お位牌を用意する
ご夫婦2名分の文字入れができるくらいの大きさの「巾広位牌」か「4寸以上の位牌」を用意します。
文字入れも2名分ですので期間に余裕を持って購入、文字入れのお手続きをしておきましょう。
魂抜き(性根抜き・お性根抜き)
先に亡くなっている伴侶のお位牌から魂を抜く供養をします。
魂入れ(性根入れ・お性根入れ)
新しく用意したご夫婦2名分の連名にて文字入れのされたお位牌に魂を入れる供養をします。
この供養によりご夫婦連名でのお位牌が完成します。
お焚き上げ
先にあった魂抜きの供養が終わったお位牌をご僧侶に依頼しお焚き上げしていただきます。
お焚き上げは必ず必要という訳ではありませんが、前日まで故人の象徴として大切に供養してきたお位牌ですので感謝の気持ちを込めてお焚き上げしていただきた方が、気持ちも良いのではないかと思います。
この様に位牌を連名で作るには、事前に余裕を持ってお位牌を準備しておく必要があることや、ご僧侶による供養が2回必要であることなど、手間と費用はそれなりにかかります。
お位牌を連名にすると「どっちの命日?」「思ったより費用がかかる」ということも
お位牌を連名にすることでのデメリットというものもあります。
故人の命日のご供養をする場合、お位牌が連名ですのでご夫婦どちらの命日なのか分かりづらく、ご家族以外の方が間違えてしまう事も考えられます。
また、費用的な面でも場合によっては高く付く場合もあります。
手順として、新たに作る連名でのお位牌へ魂入れをする前に、既にあるお位牌からの「魂抜きの供養」が必要になります。
その費用が後にお亡くなりになった方のお位牌を新たに購入する場合に比べて高額であった場合は、お位牌を追加するよりも費用が高くなってしまいます。
お位牌を連名で1つにすることによりお位牌の費用は1つ分の費用で済みますが、供養の回数は増える為、結果として高く付く場合もあるということを念頭に、連名でのお位牌をつくるか、新たにお位牌を追加するかご検討いただくと良いでしょう。
また、文字入れの際にも位牌を連名で作る時には、間違いが起こりやすいです。
ご依頼いただいた原稿をもとに、お位牌に連名での文字入れをいたしますが、お位牌の文字入れ原稿を書くこと自体が初めてという方が多いので、戒名や没年、没年齢を夫婦逆に間違えて書いてしまったりという事も考えられます。
お位牌への連名での彫りによる文字入れは、後から修正が効きませんので、十分注意する必要があります。




故人の象徴であるお位牌が連名になっているということの意味
お位牌というものは故人の象徴です。
近年では様々なデザインのお位牌がつくられ、その人にあったデザインの物をお選びいただくことが出来ます。
明るい性格だった故人には明るい色合いのモダン位牌。
個性的で人と違う波乱万丈の人生を歩まれた故人にはユニークなクリスタル位牌。
厳格で実直で人から信頼される方だった故人のお位牌は伝統的な塗り位牌など、それぞれの故人の性格や人生を象徴するようなお位牌を選んでいただくと、故人がそこにいることをより意識できるでしょう。
プロポーズの言葉として「一緒の墓にはいる」という言葉がありますが、今からすると少し古い言葉なのかもしれません。
別々に生まれた2人が、出会い、結婚して1つの名前となり、最後には一緒のお墓に入るというのは、とても仲の良い夫婦であったと言えるでしょう。
しかし、お位牌は故人の象徴ですので別々であることが基本です。
一緒のお墓に入った後にお仏壇の中のお位牌だけは別々ということに違和感を覚えるほどに仲のよかった夫婦には、夫婦連名でのお位牌である「夫婦位牌」がもっとも2人を象徴するお位牌なのかも知れません。
このように、夫婦であれば「夫婦位牌」としてお位牌を連名で作ることが出来ます。
近年の住宅事情から小さめのお仏壇が好まれる中で物理的なスペースの問題で両親のお位牌を夫婦位牌とする場合もあるでしょうし、コスト的な面で連名でお位牌を作るという選択をする人もいるかも知れません。
ですが、ご僧侶に依頼する供養の数も増え、手間の割には費用が安く抑えられることもありません。お仏壇のスペースが狭く、お位牌をまとめたいというのであれば、更に多くのお位牌をまとめる事ができる「回出位牌(くりだしいはい)」の方が有用でしょう。
それでもなお位牌を夫婦連名で作ることの意味とは「いつも一緒」だった2人の「これからも一緒に」という想いを象徴するお位牌だからではないでしょうか。